音也の寝相と言うのは多くの人が彼を見て予想するように、大の字だったりベッドの上でごろごろと動いて、たまに落下したり、朝は毛布がかかっていなかったりする。夢の中でサッカーでもしているのか、とトキヤはたまに考える。
だから一緒に眠ることになった時はもしかしたら蹴られて目を覚ますこともあるかもしれないと多少覚悟はしていたのだけど、思いのほかおとなしく意外に思ったものだ。

(……というより抱き枕にされている気分です)

冬なら納得もいくが音也は夏もそうだった。気温に関係なくトキヤに抱き着いて、もしくはどこかしらぎゅうと握ってきて離れようとしない。何故、と考えてたどり着くのはどうしても切ない理由でたとえ子供体温が暑さを助長しても引きはがすことはできなかった。
本当は多くの子供が幼いころに経験しなければならないことのはずだ。
こうやってすがるべき人(なのだろうか、自分は)にしがみつくというのは。


ふぅとため息をついてトキヤはいつものように歌い始めた。
それは音也は知らない、音也のためにトキヤが歌う歌だった。

曲調は簡単でいて甘く優しい。歌詞はうろ覚えのそれをつなぎ合わせ補った、トキヤが小さいころに母親が口ずさんだ子守唄だ。


眠るのをぐずる赤ん坊に怖くはないのよとぬくみを抱いて女性がうたう。
それに比べたらもうずいぶん大きくなってしまった彼の髪に手を差し入れて、この腕の中にいる君が好きなのだとほんの少しよこしまな想いも含ませながら。


ひくく、たかく、こえが伸びていく、彼のゆめに届くように。





(あるいは一人きりで泣いていたちいさな子供のもとにまで)