口説いたって仕方がないと言われて、いつのまにかたとえ話を忘れていたことに気が付く。自分たちの間にあるものが友人の域では収まらないことを感じつつも気が付かないふりをしていたのに、この話を振ってしまったのはうかつだった。嬉しいと思ったから彼の口からきいてみたかったにも関わらず、肯定されても行動を起こせないのは神宮寺レンの名が泣く、それでも。つかず離れずの関係が幸せすぎた。いっそこのまま何もなく気持ちが消えるのを待つのも悪くはないと思えるくらいに。
綺麗に真ん中にたどり着いたダーツを見てほっと息を漏らす。これがきっと、正しいことなのだ。
 

(男の子だって君がいいんだよ)
なんて、自分には到底言えないだろうから。