砂糖の多いお菓子も油の多いお菓子もトキヤはなんかダイエット?栄養?(説明はしてくれるんだけど冒頭で疲れるしあんまし聞いていない)とかの関係で、まるで俺が世界の珍味幼虫、とかを食べてるみたいに顔をひきつらせて怒る。食べる?って言ってもいりませんっていう。実をいうと俺もそんなに食べるほうではないんだけど、たまにどうしても欲しくなる時ってあるじゃん。今は自分の好きなように買えるからそれもあって袋ひとつ平らげちゃったりもする。これは確かに健康に悪そうだなーって思いながら。

袋に入れた指につかむものがなくて、覗いてみるともうなかった。
ご飯前だからと控えていたはずがついつい食べ過ぎてしまったらしい。

「…全部食べちゃった」

おんなじソファの上のトキヤはまだ熱心に明日使う教材に目を通している。こいつのせいで、トキヤが構ってくれないから俺は対して興味のないテレビを見ながらスナック菓子を消費する羽目になったというのに我関せずな態度。


「…夕食ちゃんと食べられますよね?それから、
……だからどうして舐めるんですか!」

やっとこっち向いた!と思ったら右手首をつかまれて、トキヤの質問にうん、大丈夫と答える予定だった俺はうおわ、と変な声を出してしまった。
「えっ何??」
「指ですよ指」
幸せをいくつ逃すつもりなんだってくらい深いため息をつくトキヤが、何怒っているのかを理解するのに少し時間がかかった。俺にとっては無意識の行動だけど潔癖なトキヤには塩のついた指をなめるっていう行為が許せないらしい。散々放っておかれた上に小言なんて今日はついてないなぁ、トキヤいちいち細かいなぁ。

「…洗ってくるよ」
だからさっさと機嫌を直してもらおうと、立ち上がろうとしたのに離してくれない。

「わ、ちょっと!」

何で?!
いきなりトキヤは俺の指を含んで、いやってほど器用な舌がなぞり始める。わけわかんなくて頭の中で沢山のクエスチョンマークが飛んだ、だってトキヤは俺に怒っていたんじゃなかったっけ?どうしてこんなことになってるの?

「…トキヤぁ」

想像してみてほしい、いや俺以外は知らなくていいけど、目を伏せて(睫毛長い)少し考え込んでるみたいに眉を寄せて(不機嫌?)整った顔の男になぜか指をなめられる情景を。
すっごく居た堪れない。
たっぷり3本の指を好き勝手舐めて最後にちゅっと音を立てて赤い舌が離れていく。
「…こういうことをするなと言っているのですよ」
「してない!俺そんなにえろくない!」
「えろ…もうすこし言葉を選びなさい」
「やらし、」

い、の音はトキヤの口でふさがれて外には出てこなかった。さっきまで俺の指をなめてたからか塩っぽい味がする。トキヤはこういう味は好きじゃなさそうなのにいいのかな、口の中もきっと同じ味がしてるはずだ。
ちらりと見えたズボン越しのそれにトキヤが興奮してることを知る。今日のトキヤは変だよ、構ってくれないと思ってたら急にスイッチ入っちゃって。

「と、きやは、さぁ、…んっ」

拒む理由もないから構わないけれど。

「舐めるの、が、すきなの?」
「は?」
「だってこんななってる」
掌でやわく撫でてやる。いくら考えてもきっかけがそのくらいしか思いつかなかった。
「っ、」
「俺も舐めたげよっか」
「おと」
「指」
「…」
「…じゃないとこでも、いいよ」

ね、とかわいらしく小首を傾げればあなたと言う人は、とかなんとか言いながらちゃっかり厚みがのしかかってくる。
滑り込んでくる指を感じながら俺も、彼のベルトに手を伸ばした。

(原因なんてもうなんでもいいや、)







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乗り気じゃないトキヤさんも好きだけど急にむらっとくるトキヤさんも好きです。
なんてことない行動に突き動かされる強引でいいんじゃない恋の衝動。(サブタイトル)