トキヤが好きで大好きで、彼が執着するすべてが許せなかった。だから奪ってやった。
そうしたら彼が手にするものは僕しかなくなる。

「はやと、聞いてる?」
「あ、ごめんにゃぁ音也くん!」
「もしかしてつかれてる?ごめん!うるさくして!」
「大丈夫だにゃー」
「そっかぁ、でも最近忙しいみたいだしさー俺心配だよ」
「番組見てくれてるんだ?」
「もちろん!」

この前の番組すごくよかった、と細かい内容を笑顔で語りだす彼を見て、そりゃトキヤが好きになるはずだよなと思った。彼はお日様みたいにあったかくて、ときどき暴走もするけれどそういうほっとけなさもトキヤが好みそうなところだ。じゃあなんでトキヤは僕を好きになってくれないんだろう。音也くんと僕って似てると思うのになぁ。
兄弟だから、だろうか。もちろん自分のこの気持ちも恋愛ではないけれど。

ときやのいちばんになりたい。

小さいころからの願いは僕が行動するたびに叶わなくなる一方で、諦観してしまってからはトキヤは気にしたそぶりも見せない。音也くんのときだけ僕をまっすぐに見てきて、ちょっと満足した。我ながら歪んでいる。

「HAYATOが頑張ってるとさ、ああ俺も頑張んなきゃって元気が出るよ」

(トキヤが音也君を好きじゃなくなったら――…)
先日彼に言った言葉がよみがえる。トキヤが欲しがるものは手にしてしまうといつも手放せなくなった。特に彼の夢だったこの世界は一瞬で自分を夢中にさせた。きっと一生この世界で生きていくだろう。

「にゃー!そういってくれる音也君が大好きだにゃぁ!」

だからきっと僕は彼のことも手放せない。
うそつきで歪んだ僕とは違う、ほんもののお日様。

(きっと僕らは焦がれるものが似ているんだね)